2016年 06月 18日
脚気と日本人〜|( ̄3 ̄)| |
先日イザベラ・バードの話(「人間の生態、習俗に見る日本人像」)の中で「脚気」について述べた件(くだり)があるのだが、実はこれが思ったより大きな問題を孕んでいるようなのだ。
「日本人とは何か」を一つのテーマとして考える際、この「脚気」の問題が大きく影を落としていることを指摘する人がいる。教育学者であり、「仮説実験授業」の提唱者として知られる板倉聖宣氏がその人である。
明治維新以後、日本人は西欧先進国の文化、文明を国を挙げて盲信し、吸収すべきモデルとして近代化に邁進してきた。反面、この西欧を唯一の到達目標とする世界認識は、「名誉白人」などと呼ばれて(馬鹿にされているのに)、能天気丸出しで喜ぶような軽佻浮薄な「指導者」を大量につくり出してきたのである。
彼ら自身に中身はないのだ。熱に浮かされるように諸外国の知識を吸収するのは『蘭学事始』や『解体新書』の時代から続いている。板倉氏はこれを「模倣の時代」と呼ぶ。手っ取り早く知識を得るためには、まずその国の言葉を理解することが一番であり、そうして日本人は近代化の波を乗り切ってきたとする。
だがそれは文明開化の名の下に、日本や東洋の文化や文明を否定することでもあった。それはいつしか自分自分の権威の保全に繋がり、頑迷固陋の気質の助長を生む。
全て借り物の権威は、それ故に権力に転嫁する。全ては自己保身のため、既得権益のために小さな権力を振りかざすようになる。そのためには強力な組織の手助けが欲しくなる。中央集権的ピラミッドの権力構造の構築がなされて今日に至るのはご存知の通りだが、その過程でなりふり構わぬ理屈など通らない組織温存がなされたのが「脚気」に於いての出来事であった。
まず脚気という病気は、幕末より起こった日本特有の病気であった。それ以前にも貴族の中での発症や東南アジアの米穀地帯での発症例はいくつか見られはしたが、大量に患者が発生したのは日本だけである。また武士には良く見られた病気でも町人にはほとんど見られなかったのも特徴であった。その一方、江戸患いと呼ばれた脚気は、国元に戻る間にいつの間にか症状が治まり、帰り着く頃には平癒してしまうことから、治療には「転地療養」が効くという誤った治療方針が出てくる元にもなった。しかし転地療養には意味がなく、転地先での食事内容の変化にその要因があったことが判るのはさらに後年まで待たなければならなかった。
町人に発生しなかったのは幕末に大流行した「そば切り」のお陰であると言われている。それまでの「蕎麦がき」しかなかった調理法にそば切りが登場して、江戸庶民の気質に合った蕎麦は大ヒット!
蕎麦は脚気の原因である不足したビタミンB1を豊富に含む食材であった。
結局この「脚気」という病気は、お手本としていた欧米には無い病気だったことに直面した日本人にとって、「模倣」の出来ないものであった。この予防治療法は日本人が自ら解決しなければならなかったのである。
徳川13代将軍、14代将軍も皇女和宮も脚気で死んだ。
さらに近代化の波とともに「集団」での罹患が発生する。中央集権化による人口動静の集中化という制度によるものと、食生活の統一が拍車をかけた。
特に、軍隊における死亡率は年々上がり、その対策に御用学者たちは全く無力であった。それは今日でも同様だが、原因は分からなくても治療は出来る。自らも何度も患者となった明治天皇は、西洋医への不信からその指示や処方を無視して「麦飯」で脚気を克服し、軍隊でも高木兼寛や堀内利国の努力により、食事の改善が行われ、一時は脚気の撲滅も間近とさえ思われた。
しかしこれは新しい闘いの序幕に過ぎなかったのである。ドイツ帰りの軍医・森林太郎(森鴎外)を筆頭とする東大医学部閥の大反撃が始まったからである。
彼らは科学的根拠がない「麦飯」を否定し、断罪を下し軍隊食を白米に戻した。その結果、日露戦争時では戦没者より脚気患者の死亡者が上回ってしまった。それも全て自分たちの自己保身と地位の保全のためである。兵隊
の死などどうでもよかった。
脚気が完全に撲滅(年間死者数0)となったのは、実に1970年のことであり、それ程長きに渡り、本邦を苦しめた影には、己の間違いを検証する謙虚な心を持たない硬直した西洋医学とその信奉者たちの信仰にも近い抵抗にあった。彼らは西洋医学を金科玉条としてその「模倣=モノマネ」こそ全てという低脳だったので〈自らの実践を通してしか得ることの出来ない創造性というものが欠如していた〉のである。
何よりもこうした御用学者による病弊により百万人に及ぶ病歿者を生んだ過去を誰も反省してない事実に愕然とする。何も学んでいない。自分の地位を保全してくれる学問は聞くが、それ以外は必ず叩きのめす凶暴な種族が日本人なのであろうか。恐らくそういう結論しか出て来そうにないが、改めて続編を出すつもりである(u_u)
by jj111iii2016
| 2016-06-18 16:24
| 日記・出来事